食えなんだら食うな

食えなんだら食うな

 

今日は、少し前に御紹介した強力な一冊について再び。

 

 

 

絶版となり、中古市場で目玉が飛び出るほどの高額で取引されていた幻の一冊。こういう素晴らしい本が、一部の人たちの間だけでしか読まれていなかったなんて、大きな損失だったと思います。

 

 

題名にある「食えなんだら食うな」 ここには深い意味が込められています。その意味というのも一つではないし、また、人によって違う解釈も可能な言葉です。

 

 

私自身は、こんな風に解釈して、自分の中に取り入れました。

 

食えなければ、食わねばいい。何も恐れることはない。

本来、食えるはずがないんだから。だって、自分でお米や野菜を作っているわけでもないし、自分で魚を獲ってくるわけでもなく、自分で牛や豚を育てているわけでもない。自分で加工しているわけでもなく、自分で運んできたわけでもない。

そんな、本来なら食えるはずのないものを、食わせていただいているのだ。だから、例えばお米を食べる際には、せめて遠くのお百姓さんの労に思いを馳せて、いただく。調理してくれた人の労を思い描いて、いただく。

そして、「本来なら食えないはずなのに、食える」というのは、世の中に対して何かしら為すからであり、それが「仕事」というものではないか。

 

 

・・・と。

読んだ人それぞれ、感じることは違っていいと思います。

 

 

一日為してこそ、食うものが食える

 

という著者の言葉が印象に残りました。

 

 

ここ最近クローズアップされている「老後資金2,000万円問題」も、この「食えなんだら食うな」という考え方を自分の中の軸として持つことで、十分に対処できるような気がするのですが、どうでしょうか。

 

 

 

 

さて、本書から一つ、受験に関するエピソードがあったので御紹介。お寺には、病んだ子を預けに来る親御さんも少なくないそうで、興味深い話がたくさん紹介されていました。そのうちの一つです。

 

もう一人の男は、受験浪人だった。何度かめざす一流大学に挑んでは、敗れた。そして、睡眠薬を嚥(の)んだ。助かったところを、やはり母親に連れられてやって来た。

 

この青年にも「死神」がついていた。私は何もたずねなかったが、おそらく彼の心中をいえば、一流大学へ入れぬぐらいなら、死んだ方がマシだといったようなつもりらしい。

 

いまどきの青年に多い、視野の狭い、それゆえに、一途さのある若者なのだろう。お寺では型通りに座禅をし、作務をした。しかし、何日たっても彼の「死神」は、離れていかない。一流大学への入学か、さもなくば死かという選択が脳裏からはなれぬものと見えた。

 

ある朝、暁天の坐禅で、私は警策をもって歩いていた。坐った彼の上体が、ふらふらと動いていた。私が前に立った。この場合、禅の作法で、合掌して、警策を受ける姿勢をとらねばならない。私は、手をそえ、その姿勢をとらせ、

 

「喝!」

 

と一撃を加えた。

 

一撃を加えつつ、

 

「自殺するなんて」

と怒鳴った。一撃。

 

「威張るな」

 

一撃。彼は、殆んど飛び上がりそうになった。

 

飛び上がりそうになって、しゃんと坐った。彼は、めざめたのである。一流大学以外にも大学はあること。一流大学を出なくても、立派に人間らしく生きている人がいるという平凡な事実とが、わかったのである。その後、彼はかなり長い間、吉峰寺にいたが、やがて、山を降りて行った。

 

暫くして、母親から手紙が来た。彼の勉強部屋を覗いたら、「自殺するなんて威張るな」と書いて貼ってあるという。

 

(関 大徹著 「食えなんだら食うな」より抜粋)

 

 

 

 

 

本書の復刊に際し、あとがきを寄せている執行 草舟氏の言葉が凄いです。抜粋ばかりで申し訳ないんですけど、どうしても紹介しておきたいので。

(前略)

本書は、そのような数少ない名著の中の名著の復刊なのだ。手に取る読者の方々は、ここから新しい人生が生まれると思ってくれていい。本書にはそれだけの力があるのだ。著者の関大徹老師は、禅の最高境地を生き切った本物の大人物である。禅僧というだけではない。人間として、最高の人間なのだ。私が知る最高の魂を具現している。厳しく悲しい人である。温かく面白い人である。そして、何よりも可愛らしい人だ。私はそう思う。

 

だからこの本は、死ぬ気で読んでほしいのだ。すべてを信じて読んでほしいのだ。つまり、本書自体を食らうのである。自分の肉体に、この本を打ち込んでほしい。自分の精神に、この本を食わせてほしいということに尽きる。そうすれば、読む者の中に生(せい)の飛躍が起きるに違いない。ひとつの革命が、読む者の人生に訪れて来るだろう。それが読む者の運命を創り上げていく。本書を自己の座右に置けば、必ず運命の回転が訪れて来る。

 

 

 

私の中でも大切な一冊になりました。スパーク文庫に入れておきます。興味のある方は、ぜひ。

https://booklog.jp/users/sparkkobetsu